石破茂首相は11月中旬に予定する南米訪問に合わせ、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談する。首脳間を含むハイレベルの対話を推進し、日中の経済交流などを強化すると確認する。日本で開催予定の次回2025年の日中韓サミットをにらみ、懸案を抱えつつも意思疎通できる関係構築を目指す。
両首脳の会談は初めてとなる。ペルーで15〜16日に開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議の際に開催を見込む。
日中が経済面など共通の利益を追求する「戦略的互恵関係」に基づき、連携策を話し合う。06年に当時の安倍晋三首相が提起し、08年の日中共同声明に明記されてから日中の外交方針の土台となってきた。
2国間関係の悪化などもあり、この文言の使用は一時途絶えていたものの、23年11月に米国で開いた習氏と当時の岸田文雄首相の首脳会談で6年ぶりに復活した。この時、両首脳は「新時代の日中関係」を確認した。アジアの隣国として協力できる分野を追求し、偶発的な衝突を防ぐ意図があった。
日本は対中国で「建設的かつ安定的な関係」を維持する戦略をとっており、首脳や外相、国家安全保障担当トップといったハイレベルの対話を拡大していく。
25年に日本で開催を模索する日中韓サミットに合わせて李強(リー・チャン)首相の来日が想定されている。中国首相の来日は新型コロナウイルスの感染拡大もあり、18年以来実現していない。
習氏の日本訪問は19年に大阪で20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を開いて以来実現していない。日中韓サミットを足がかりに機運醸成を進める。
日中間には懸案が山積する。首相は日本産水産物の輸入再開について提起する。23年夏以降、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を受けて中国が全面停止している。
9月に国際原子力機関(IAEA)による処理水の採取調査に中国が参加することで、段階的な再開に向けた調整をすると日中間で合意した。
中国軍の日本周辺での活発な軍事活動について懸念を伝える。8月に中国軍の情報収集機による初の領空侵犯が起きた。
東・南シナ海での現状変更の試みをしないように中国に大国としての責任ある行動を求める。北朝鮮がロシアに兵士を派遣したことも取り上げる可能性がある。
中国広東省深圳市の日本人学校に通う児童が刺殺された事件を踏まえ、邦人保護の強化を要請する。拘束された邦人の即時解放も求める。
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