政府は8日午前、首相官邸で地方創生策を検討する閣僚会議「新しい地方経済・生活環境創生本部」の初会合を開いた。石破茂政権は地方創生を看板政策に掲げ、2025年度予算案で関連交付金の倍増をめざす。人口減や社会的な基盤の維持といった地方が抱える課題の解消に向け、今後10年間の基本的な考え方を年末にまとめる方針だ。
①安心して働き、暮らせる地方の生活環境②東京一極集中のリスクに対応した人や企業の地方分散③付加価値創出型の新しい地方経済④デジタル・新技術の徹底した活用⑤「産官学金労言」のステークホルダーの連携と国民的な機運の向上――の5つを柱に据えて議論する。
首相は8日の初会合で、10年ほど前に初代地方創生相を務めた経験をふまえ「これまでの10年間の成果と反省を生かさなくてはならない。反省は何なのか検証しなければこの先の展望はない」と述べた。
商工会議所や行政、教育機関、金融機関、労働組合、地方新聞社・テレビ局からなる有識者会議の立ち上げを表明した。地方が抱える課題などを検証して政策立案に生かす。
倍増方針を示した地方創生の交付金については「金額だけ増やしては何の意味もない。重点化し、ばらまきという批判を受けないようにしたい」と語った。
11月にもまとめる経済対策に関し「農林水産業、観光産業などの高付加価値化、日常生活に不可欠なサービスの維持向上、新技術を活用した付加価値創出などの取り組みを支援する」と強調した。
首相が本部長を務め、全閣僚で構成した。副本部長には林芳正官房長官と伊東良孝地方創生相が就いた。
経済産業省は同本部の設置を受けて各地域の経済産業局長らが出席する会議を開き、地方企業の声を集める。8日に予定する会議では設備投資などの現状を報告する。
25年6月にもまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に、今後10年間を見据えた具体的な施策を盛り込む見通しだ。
地方創生は首相にとって思い入れのある政策だ。10月28日の記者会見でも「日本創生」を訴え、「地方と都市が結びつくことにより日本社会のあり方を大きく変える」と呼びかけた。「地方創生2.0」と名付けて改めて政策をてこ入れする。
首相は14年9月に発足した第2次安倍晋三改造内閣で初代の地方創生相を務めた。同年12月に決定した長期ビジョンには「2060年に1億人程度の人口を確保する」と盛り込んだ。東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけることをめざした。
地方を取り巻く環境は依然として厳しい。ビジョン策定から約10年がたったが、人口減少と東京一極集中は止まっていない。
国立社会保障・人口問題研究所が23年に発表した将来推計人口によると、56年には1億人を割って9965万人になり、70年には8700万人になる見通しだ。
総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、23年の東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)は転入者数が転出者数を上回り、28年連続で転入超過を記録した。地方の人口流出が続く。
首相は10月の所信表明演説で「婚姻率が低い県は人口減少率も高いことは厳然たる事実だ」と指摘した。「若年世代の人口移動をみると10年間で全国33の道県で男性より女性の方が多く転出した」と説明し、婚姻率の上昇を念頭に、若者や女性に選ばれる地方の実現を訴えた。
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