自民、公明両党の衆院選での大敗は、憲法改正にも影を落としている。改憲に前向きな自民、公明、日本維新の会、国民民主4党の獲得議席は計281議席となり、改憲発議に必要な3分の2(310議席)を下回った。自民は来年、結党70周年を迎えるが、党是とする改憲実現が遠のく可能性がある。
「与野党の枠を超え、憲法改正の発議に必要な国会での3分の2以上の賛成が得られるよう建設的な議論を行い、精力的に取り組む」
石破茂首相(自民党総裁)は28日、記者会見で改憲に向けた決意を改めて示したが、機運は下火になりつつある。
衆院選で4党の獲得議席は、自民191議席▽公明24議席▽維新38議席▽国民民主28議席――の計281議席で、公示前の338議席から大きく減らした。
緊急事態で国会議員の任期延長を可能とする憲法改正に向け、4党と共同歩調をとる衆院会派「有志の会」を加えても3分の2を下回る。
歴代政権の中で、改憲にとりわけ強い意欲を示したのは第2次安倍晋三政権だ。2016年参院選の結果、衆参両院で改憲勢力が3分の2を超え、安倍氏は17年、9条改正と改正憲法の20年施行を目指すと表明した。18年には、憲法改正で盛り込む条項として、自衛隊の明記▽緊急事態対応▽参院の合区解消▽教育充実――の4項目をまとめた。
岸田文雄前首相は、自らが掲げた「総裁任期中の改憲」を実現できなかったものの、4党1会派が緊急事態条項のうち議員任期延長に論点を絞り、条文化に向けた動きを活発化させていた。
衆院選の全候補を対象にした毎日新聞のアンケートで当選者分を集計すると、緊急事態条項の改憲について「必要ない」との回答が34%に上った。一方で「国会議員の任期延長のみ認めるべきだ」は16%、「内閣の権限強化とともに国会議員の任期延長を認めるべきだ」は38%で、合計しても3分の2には届かなかった。未回答または無回答は計9%だった。
衆院選での与党過半数割れを受け、永田町では今後の政権運営を巡る与野党の駆け引きが正念場を迎えようとしている。自民中堅は「憲法改正も大事なことだが、今はそれどころじゃない」と冷ややかに語った。【竹内望】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。