27日の衆院選の投票日が1週間後に迫り、各党の党首が全国を行脚している。石破茂首相(自民党総裁)は人口の少ない県に重点を置く。立憲民主党の野田佳彦代表は「政治とカネ」問題に関わった自民党の前職らの選挙区を回り、対決姿勢を強める。
首相は19日、鹿児島県を訪れた。薩摩川内市など3カ所で演説する。看板政策に据える地方経済の活性化や農業振興を訴える見通しだ。2024年度補正予算案を巡り、前年度の13兆円を超える規模にすると打ち出している。
首相は15日の公示から19日までに10道県を回り、演説は20回ほどに達する見込みだ。人口500万人以下の福島や山梨、徳島の8県を含む。地方創生相や農相を務めた経歴があり、地方重視の姿勢が鮮明になっている。
代わりに大都市は子育て世代や若者に人気が高い小泉進次郎選挙対策委員長が担う。19日は千葉や埼玉両県、東京都を訪れる。すでに大阪府や兵庫県などで遊説した。選挙終盤に首都圏を重点的に回って浮動票を集める計画がある。
野田氏は19日、浜松市で演説する。同市は自民党を離党して政界を引退した塩谷立氏が地盤とした。塩谷氏は政治資金収支報告書への不記載問題を起こした旧安倍派の座長を務めた。政治資金問題を争点にするため、野田氏は不記載議員に関連した全国各地の選挙区での遊説を戦略の中心に据える。
17日に応援へ駆けつけた千葉3区は、政治資金問題を巡って自民党から非公認になった松野博一氏が出馬した。同じく非公認の萩生田光一氏の地元、東京都八王子市でも15日に演説し「裏金議員を裏で支える自民党政治に決別しようではないか」と呼びかけた。
日本維新の会の馬場伸幸代表は首都圏に集中する。19日は千葉県を回るものの、18日までは都内で演説を繰り返した。地盤を関西から関東に広げて全国政党に引き上げる方針を反映する。
公約も都市の子育て世帯を意識する。15日に東京都新宿区で臨んだ衆院選の第一声で「大阪では幼稚園、保育園の幼児教育の無償化にはじまり、小学校、中学校の給食費も無償になった」と実績を唱えた。こうした取り組みを全国に広げる考えだ。
「手取りを増やす」をスローガンにする国民民主党の玉木雄一郎代表も大都市を重視する。これまでに首都圏や大阪、宮城県などを訪問してきた。
都市部に多いとされる共働き世代を念頭に所得税が発生する「年収の壁」を103万円から178万円に引き上げると公約に盛る。「現役世代にかなり大きな負担となっている社会保険料を引き下げる」と明言する。
公明党の石井啓一代表は自らの埼玉14区を優先する。15日に東京都豊島区で第一声を終えると、同日中に14区に入った。その後も地元で活動する機会があり、20日も回る予定だ。全国で党勢拡大をめざしつつ、自身の地盤固めも急ぐ。
公明党は自民党が非公認とした埼玉13区の三ツ林裕巳元内閣府副大臣に推薦を出した。石井氏の14区の一部はかつて三ツ林氏の地盤だった経緯があり、自民党から支援を得る思惑が透ける。公明党は公約で物価高対策として低所得者世帯向けの給付金を示した。石井氏は「1世帯10万円が目安」と言及した。
共産党の田村智子委員長は全国を飛び回る。全ての比例ブロックで議席を確保し、上積みする目標を掲げている。公約で消費税を10%から5%に当面下げるべきだと主張する。
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