シリーズでお伝えしている衆院選をめぐる特集です。
今回は「投票権の歴史」と「若者の投票」にスポットを当て、改めて投票の意義を考えます。
2016年、公職選挙法の改正により、20歳以上から18歳以上に引き下げられた投票権。
鹿児島県内では、ダブル選挙となった2016年7月の参院選と県知事選がその最初の選挙となりましたが、政治学が専門の鹿児島大学・平井一臣名誉教授は、この法改正に懸念があったと振り返ります。
鹿児島大学・平井一臣名誉教授
「(選挙権の年齢が)拡大したこと自体は意味はあると思ったが、それ以上に『投票率に結びつくのかな』と」
その懸念は的中します。
こちらは2016年7月以降の国政選挙、県知事選挙、県議会議員選挙、すなわち県民全体が関わった選挙の投票率です。
これに抽出調査で算出された18歳と19歳の投票率を並べてみると、いずれの選挙でも、新たに投票権を得た18歳と19歳の投票率は、全体を大きく下回っていることがわかります。
明治時代の1890年から始まった日本の選挙制度。
この時、投票できたのは、一定額以上の税金を納めた25歳以上の男性だけでした。
これが大正時代の1925年になると納税要件が撤廃され、25歳以上のすべての男性が投票できるように。
そして太平洋戦争が終わった1945年には、20歳以上のすべての男女が投票権を持つようになりました。
投票権の年齢引き下げは、それ以来となる約70年ぶりの変化でしたが、平井名誉教授は過去の選挙法改正と9年前の改正には大きな違いがあると指摘します。
平井一臣名誉教授
「(過去の選挙権拡大は)多くの時間と血がにじみ出るような人々の努力で勝ち取った権利だった。(選挙年齢引き下げは)獲得する動きがあって、というよりは天から降ってきたみたいな形で、『獲得した権利だ』という意識が弱い」
「よろしくお願いします」
鹿児島大学4年、穂山修平さんです。
2年前から選挙コンシェルジュ鹿児島のメンバーとして、選挙啓発活動に参加している穂山さん。
そんな穂山さんの目に、同世代の投票率が低迷する現状とその背景はどのように映っているのでしょうか。
鹿児島大学法文学部4年・穂山修平さん
「若者世代の低い投票率は同世代として残念だが、一方で共感できる部分もあって、実際に投票しても『政治に反映されている』という意識があまりないので」
それでは若者の投票率を上げるにはどうすればいいのでしょうか。
穂山修平さん
「家庭や学校などで政治を語る場を設けることが必要と考えている。たとえば高校の教育では公平性が重要視されるので、特定の政党について論じることは全くないと思うが、そういう意味では教育と政治は距離が離れていると感じる」
教育と政治の間にある、「距離」。
それは平井名誉教授も指摘しています。
平井一臣名誉教授
「日本は政治教育がほとんどなされていない。根本的に改めて政治について考える、政治について議論する、そういうことを積極的に考えないと、下手をしたらさらに投票率が下がりかねないと思う」
大きな選挙のたびに、「懸念」の意味合いを込めて注目される投票率。
KTSがアプリで実施した「何を重視して投票先を決めるか?」というアンケートの結果を見てみると、経済対策を重視する人が多い傾向はどの年代でも一致していましたが、そのほかでは若い人ほど教育・子育てを重視する人が多かったのに対し、年齢を重ねるほど、医療・福祉や裏金問題を重視する人が増えていました。
若い人が投票にいかないということは、そういった考え方の違いを無条件で受け入れることとも言えます。
それでいいのでしょうか。
若者のひとりとして、穂山さんはこう訴えます。
穂山修平さん
「投票に積極的に参加することは未来に対して責任を果たし、未来の日本をより良くするために必要不可欠な行動と考えている」
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