10月15日公示された衆議院選挙。選挙の争点について、シリーズで伝える。
震災前の“25%”。この数字、実は…福島県内の2023年の沿岸漁業の水揚げ量だ。「常磐もの」が市場で高い評価を得るなど水揚げ量は年々増えているが、風評対策など復興を後押しする施策がいまも求められている。
福島県の漁業の復興に向けて、いま託す“一票”とは?
福島県相馬市の松川浦漁港は、9月に解禁された底引き網漁で活気づいていた。
漁師は「楽しくねえと(漁)やんねえべ、楽し~最高に。色んな魚獲れるんだ、底引きだからな」と話す。
<中国が段階的に禁輸緩和措置へ>
原発事故による操業制限や、2023年8月に始まった処理水の海洋放出など、多くの課題に直面しながらも、震災前の“海”をゆっくりと取り戻してきた。その中で、いま期待されているのが中国への“輸出再開”だ。
中国政府は、9月処理水の放出後続けてきた日本産水産物の禁輸措置を「条件付き」で段階的に再開させることを表明。規制撤廃に向けて一歩を踏み出した。
<漁師の期待>
賀宝丸の三春智弘船長は「ここはナマコとかが3分の1くらいの値段に下がっているのが現状で、それはどこまで回復するのか分からないけど、あとの鮮魚については、あまり変わらないと思う」という。
一方、期待する漁師も…。
共栄丸の大久保優矢さんは「魚の値段ももちろん上がるでしょうし、それこそみんな買ってくれるんだったらね、嬉しいですよ。こっちもね、獲り甲斐があるっつうか」と話す。
<中国市場へ福島県産水産物を>
再開時期は不透明だが、「一大消費地」に福島県産水産物を売り込もうと動き出した事業者も…。
相馬市でアオサの加工・販売を行うマルリフーズ。台湾やマレーシアをはじめオランダやフランスなどにもアオサの加工食品などを輸出していて、中国市場には震災前から魅力を感じていた。
マルリフーズの阿部純也営業部長は「世界でアオサを広めていきたいというのがありますので、中国の圧倒的な人口というのもすごく魅力的なマーケットだと思う」と話す。震災前は実際、参加した中国の展示会で、「健康食品」としてノリの佃煮の販売が好調。正式な取り引きに向けて話が進んでいたが、震災で白紙に…。
<中国進出に向け準備>
震災から13年余り、もう一度中国市場に挑戦するための準備がいま進んでいる。
「ジュー」中国のバイヤーに売り込もうと、この日、社員が自宅で試作していたのは…。「今はですね、アオサをいれました海鮮チャーハンになりますね。是非今回中国の方へも合うようにチャーハンに入れてみました」と阿部部長は話す。
中国で受け入れやすいレシピを開発することが、アオサの「中国進出」につながると考えている。阿部部長は「松川浦で養殖しているこのアオサ、本当にこれだけ私たちが良いものだと自負していますので、それを知っていただきたい。いい機会になればと思います」
しかし、中国を始めとした海外進出は簡単ではない。稲村利公社長は震災直後、取引先で言われた言葉がいまも頭に残っている。
「福島県人が住んでるんですかと、そこまで(当時)言われてるんで、基本的には難しいですよね」と稲村社長が話す。そのような風評は払拭されてきたが、課題の1つが生産量だ。
<生産量が課題>
松川浦のアオサは、2018年に7年ぶりに出荷が再開されたが、生産量はまだ震災前の25%程にとどまっている。安定的な輸出には、震災前の生産量に近付けることも必要になる。そうした中、いま政治に求めることは…。
マルリフーズの稲村利公社長は「前向きに新しい商品を開発したり、安全・安心な商品を供給してきて、いまここにきてそれは評価されているので、そういう形でやっていければ福島の復興は出来ると思うし、そこに政治的なバックアップをして頂ければ」と話す。
衆議院選挙は27日投開票される。
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