衆院の解散を受け、15日の公示に向けて各立候補予定者らは一斉に選挙モードに入った。各陣営がのぼりや選挙カーなどの手配を進め、選挙用品を扱う会社も対応に追われている。
自民党が派閥の政治資金パーティー裏金事件に関わった一部の議員を非公認とし、選挙準備にも影響が及んでいる。「注文を止めてくれ!」。突然の「非公認」に、ある陣営は慌てて発注先に電話をかけた。党名を消したり、注文していた選挙用品を止めて作り直したりする必要があるなど、急な変更を余儀なくされている。
新首相就任から8日後の解散、26日後の投開票はいずれも戦後最短となる。大阪府内のある陣営幹部は選挙が「あと1週間くらいは遅くなると踏んでいた」と話す。選挙用品はあまり早くから用意しても汚れたりする。選挙戦略もぎりぎりまで考えたいため、あらかじめ準備をするのが難しいと打ち明ける。
「急な解散で焦っておられる方も多い」。選挙用品を扱う多くの会社が納品に向け、準備を急いでいる。
オフィス用品などを販売する「ジャストコーポレーション」(福井市)には、衆院解散が2日後に迫った7日の月曜日ごろから、全国から注文や問い合わせの電話がひっきりなしにかかってきている。「来週までに欲しい」など切羽詰まった相談も目立つ。のぼり旗やたすきなどが注文の9割を占め、立候補予定者名だけではなく、「本人」と書かれたのぼりや、イメージカラーで文字が書かれていないものの注文も多いという。政党や本人のイメージカラーを前面に出し、公職選挙法に抵触しない範囲で、立候補予定者のイメージづけを図る戦略の一つとみられる。
選挙の時期になると「七つ道具」という言葉を耳にするが、これは各選挙管理委員会が無料で候補者に交付するものだ。大阪府選管では、選挙事務所の標札や選挙カーなどにつける表示物、街頭演説での運動員の腕章や個人演説会の表示板などを配布する。選挙運動を無制限に認めると財力などでゆがめられてしまう恐れがあるため、公平性の観点から制限を設ける趣旨で交付される。
選挙でよく目にするたすきやのぼり、立て札看板などは候補者が用意する必要がある。初出馬用のセットなどを販売する「選挙用品ドットコム」の田村亮代表は「人によって選挙の仕方は違う。例えば街頭活動中心なら拡声器は欠かせない」と話す。最近はSNS(ネット交流サービス)で選挙が「見える化」しており、公選法に抵触していないかのチェックも厳しくなっている。そのため「公選法上、可能な範囲で活動できるよう攻めだけでなく、守りもしっかりと考えた上で相談に乗っている」と話す。【芝村侑美】
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