支援者と握手を交わす立候補予定者(右)=福岡市中央区で2024年10月5日午前11時19分、竹林静撮影

 石破茂首相(自民党総裁)が就任直後に9日の衆院解散を表明して初の週末となった5日、各地の選挙区は15日公示、27日投開票に向けて一気に「選挙モード」に突入した。派閥の政治資金パーティー裏金事件などで逆風続きの自民は、選挙の顔が変わったことで形勢逆転を図るが、石破氏は早々に発言のブレを指摘されるなど、不安定さも垣間見える。立候補予定者らは読めない「風」に戸惑いながら短期決戦に挑む。

 九州一の繁華街・天神がある福岡市中央区が含まれる福岡2区は、転勤族が多く国政選挙のたびに有権者が入れ替わり、無党派層の動向が結果を大きく左右する。過去の選挙では、副防衛相の自民現職、鬼木誠氏(51)と立憲民主党現職の稲富修二氏(54)が毎回激しい接戦を演じており、風の動きは大きな関心事だ。

 だが、2012年に自民が与党に返り咲いた選挙で初当選した鬼木氏にとって、裏金問題の逆風の強さはこれまでとは違った。「私は裏金に関与していない」。こう強調しても、支援者からは「今回ばかりは票を入れられない」と厳しい声が寄せられた。陣営は迷った末、有権者に配るビラから裏金への関与を否定する文言を外すなど、風向きが変わるのを待った。

 9候補が乱立した9月の自民総裁選では、一気に注目を集め世間を取り巻くムードが変わることを期待した。だが、新総裁が決まり選挙日程が事実上決まったいま、陣営の表情は険しい。自民を支持する団体幹部は「石破人気に期待したのに1週間で言うことが変わった。『手のひら返し』と批判されても仕方のない状況で票の行方が見極められない」とこぼす。

 一方、4連敗中で悲願の選挙区当選を狙う稲富氏。連合福岡が仲介し国民民主党県連とは協力体制を築いたが、野党候補者の一本化は進んでおらず、21年の前回選挙は共闘した共産党の票が流れる懸念も残る。

 5日に市内で緊急集会を開いた稲富氏は集まった約60人の支援者を前に「自民(の議員)は国民の方を見ず、どうすれば良いポストに就けるかばかりを考える。裏金議員は問題外だが、それ以外の与党議員も黙認していたので同じことだ」と批判。陣営の幹部は「自民は総裁選で注目を浴びたが、これ以上の良い材料を持っていないはずだ。今後の党トップの発言次第で情勢が変わり、国会での論戦が2区の票の動きに直結するだろう」と見通した。

 投開票までに誰が風をつかむのか。2区ではほかに、日本維新の会新人の本司敬宏氏(39)▽共産新人の松尾律子氏(52)▽無所属新人の沖園理恵氏(50)――が立候補を予定している。【竹林静】

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