石破茂首相は4日午後の衆参両院本会議で就任後初めての所信表明演説に臨んだ。地域それぞれの可能性を最大限に引き出す地方創生について「地方こそ成長の主役」と唱え、当初予算ベースで交付金を倍増する目標を表明した。防災や減災に向け防災庁の設置に向けた準備も打ち出した。

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首相は①ルール②日本③国民④地方⑤若者・女性の機会――の5つを守ると掲げた。「日本の未来を創り、未来を守る」と言明した。国民の「納得と共感をいただきながら安全安心で豊かな日本を再構築する」と語った。

自身が2014年に初代の地方創生相に就いた経験から「地方創生の原点に立ち返り、地方を守り抜く」との考えを示した。「これまでの成果と反省を生かし『地方創生2.0』として再起動する」と主張した。今後10年間を集中取組期間とする基本構想をつくるとした。

岸田文雄前首相が立ち上げた「デジタル田園都市国家構想実現会議」を発展させて「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設する。ブロックチェーン(分散型台帳)といった新しい技術やインバウンドの効果的な活用も視野に入れる。

「経済対策を早急に策定し実現に取り組む」と表明した。

経済対策は「物価高の克服」「日本経済・地方経済の成長」「国民の安心・安全の確保」を柱とする。物価高の影響を受ける低所得者世帯への支援や中堅・中小企業の賃上げ環境の整備、国土強靱(きょうじん)化などを進める。

首相は過去の「失われた30年」と新型コロナウイルス禍に触れ、経済状況は改善したものの「国民が安心して消費できる経済になるには道半ば」だと指摘した。

物価上昇を上回る賃上げを定着させ、国民が生活が豊かになったと実感してもらう必要があると言及した。生産性の向上などにより、最低賃金を2020年代に全国平均1500円にする目標を掲げる。岸田前政権での30年代半ばの目標から前倒しとなる。

防衛力の最大の基盤は自衛官との考えに立つ。自衛官の生活・勤務環境や処遇改善に向けて首相をトップとする関係閣僚会議を設置する。能動的サイバー防御の導入に向けた検討も加速する。

自民党総裁選でも掲げてきた自身の看板政策の防災庁の設置も改めて唱えた。「風水害の頻発化・激甚化に早急に対処できる人命最優先の防災立国を構築しなければならない」との認識を示した。

経済成長のため官民で総合的な「幸福度・満足度」の指標を策定し「一人ひとりが豊かで幸せな社会の構築をめざす」と呼びかけた。

エネルギーを巡り、人工知能(AI)時代の電力需要の激増に備えて原子力発電と再生可能エネルギーの活用を進める。スタートアップ支援策と政府のAI政策の司令塔機能を強化すると表明した。岸田前首相が推し進めた「資産運用立国」を引き継いで「投資大国」をめざす。

リスキリング(学び直し)などの人的資源への最大限の投資が不可欠だとして、何度でも必要な学びが得られる体制を整える。女性が参画して活躍できる社会に向けて、国民的な議論を主導して制度改革の実現に取り組む。

自民党の政治資金問題に関して「問題を指摘された議員一人ひとりと改めて向き合い、反省を求め、ルールを守る倫理観の確立に全力を挙げる」と訴えた。政治資金規正法の順守と透明性の高い公開の必要性も唱えた。

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