酒井菜摘氏

 28日に投開票された衆院3補選で当選者が次々と決まった。自民党候補が不在の中で9人による乱戦となった東京15区は、立憲民主党新人が日本維新の会新人や著名な無所属候補らを抑えて勝利。島根1区、長崎3区でもそれぞれ立憲の元職が当選を決め、「政治とカネ」などの問題で政権に逆風が吹く中、野党第1党が有権者の期待を集める形となった。

 過去最多の候補者9人が立候補した衆院東京15区補選は、立憲民主党新人で元江東区議の酒井菜摘氏(37)が、小池百合子東京都知事の支援を受けた無所属新人の乙武洋匡氏(48)=国民民主党推薦=らを破って初当選を果たした。酒井氏は共産党や社民党の支援も受け、「野党共闘」を背景に政権批判票を集め、混戦から一歩抜け出した。

 東京15区補選は江東区長選を巡る選挙違反事件で有罪となった柿沢未途元衆院議員=自民党を離党=の辞職に伴い実施された。派閥の裏金事件でも逆風下にあった自民は公認候補を擁立できず、政権批判票や候補者不在の自民票を各陣営がいかに取り込むかが焦点となった。

 立憲の酒井氏は「政治とカネ」を巡る自民の不祥事を念頭に「こんな状況で自民に政治を任せるわけにはいかない」と政権批判を展開。泉健太代表や枝野幸男前代表、野田佳彦元首相、蓮舫参院議員ら知名度のある党所属議員が連日応援に入り、支持を広げた。

 地元の江東区で立憲の区議は1人しかおらず、元々の支持基盤は弱い。しかし今回は、区議5人を擁する共産が告示直前に候補予定者を取り下げて酒井氏への支持を表明。政権に批判的な層に幅広く浸透した。

 日本維新の会新人で元会社員の金沢結衣氏(33)=教育無償化を実現する会推薦=は2021年の前回選に続く挑戦だった。維新は馬場伸幸代表や音喜多駿政調会長ら党幹部を集中的に投入。吉村洋文共同代表(大阪府知事)も告示前後に駆けつけ、選挙区内を練り歩き「クリーンな政治」や教育無償化を訴えた。選挙戦では馬場代表が「立憲に投票しないで」と強調するなどして立憲への対決姿勢を鮮明にしたものの、政権批判票を集めきれなかった。

 乙武氏の選挙戦には、小池都知事や国民民主の玉木雄一郎代表が繰り返し応援に入った。小池氏は選挙カーに乗り込み自らマイクを握って支持を呼びかけた。乙武氏に対しては当初、自民も本人からの要請があれば推薦を出す方向だったが、要請がなかったため自主投票に。公明党も推薦を見送ったため、保守層の支持に広がりを欠いた。

 東京15区では、特定の諸派新人の陣営が他陣営の演説中にスピーカーを使って批判を重ねたり、選挙カーを追い回したりして各地で騒ぎが起き、異例の選挙戦となった。【長屋美乃里、白川徹、小林遥】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。