岸田文雄首相の自民党総裁任期満了に伴う総裁選は12日告示され、石破茂元幹事長(67)=無派閥▽茂木敏充幹事長(68)=茂木派▽高市早苗経済安全保障担当相(63)=無派閥▽河野太郎デジタル相(61)=麻生派▽上川陽子外相(71)=旧岸田派▽加藤勝信元官房長官(68)=茂木派▽小泉進次郎元環境相(43)=無派閥▽小林鷹之前経済安全保障担当相(49)=二階派▽林芳正官房長官(63)=旧岸田派――の9人が立候補を届け出た。2008年と12年の5人を超え、過去最多の立候補者数を大幅に更新した。
派閥の政治資金パーティー裏金事件に関与した議員の処遇や政治資金の透明化、選択的夫婦別姓制度の導入、物価高対策などが争点で、27日の投開票に向けて論戦が本格化する。新総裁が10月にも衆院解散・総選挙に踏み切る可能性があり、「選挙の顔」を選ぶ意味合いも強い。
12日午前10時から党本部で立候補の受け付けが始まり、9氏の陣営が届け出た。午後には各候補者が所見発表演説会に臨む。
届け出を前に東京都内の神社を参拝して「必勝祈願」をした小泉氏は、記者団に「ここからが長いですから毎日を大切に、一つ一つ丁寧に私の思いを訴えて、最後は勝利を勝ち取ることができるように全身全霊で頑張っていきたい」と過去最長の15日間の選挙戦に意欲を示した。
告示日前日に滑り込みで出馬表明にこぎ着けた上川氏は記者団に「大変身の引き締まる緊張感の中にも、未来に向けてしっかりとやろうという思いだ」。当選4回で初の総裁選に挑む小林氏は「自民党では極めて異例だと思うが、総裁選に臨む私自身の姿が自民党が本気で生まれ変わる象徴になる」と意気込みを語った。
岸田首相は8月、「総裁選で『新生自民党』を国民に示すために身を引く」として退陣を表明。自民は裏金事件で失墜した信頼の回復に向けた「党刷新」を今回の総裁選の最大のテーマに掲げている。
選挙戦では、各候補が裏金事件とどう向き合うかが問われる。関与した議員を次期衆院選で公認するかどうかや不記載相当額の返納などが争点となる。政治資金の透明化に向け、政策活動費の公開時期や存廃などを巡っても論戦が交わされる。
「脱派閥」がどこまで進むかも焦点となる。派閥は投票先を絞ることで「数の力」で影響力を示してきたが、今回は一本化した派閥はなく、いずれも支持候補は複数に割れている。
一方、麻生派は河野氏、茂木派は茂木氏、旧岸田派は林氏を支持する議員が半数以上を占め、3氏の支持基盤となっている。議員票の比率が増える決選投票では「派閥票」が勝負を分ける可能性がある。政策論争では選択的夫婦別姓制度の導入や物価高対策、解雇規制の見直しなどが焦点となる。
世代交代が進むかも注目される。立候補者は年代別に40代2人、60代6人、70代1人。戦後、最も若く総裁に選出されたのは06年9月の安倍晋三元首相で51歳。40代の小泉氏、小林氏が選出されれば戦後最年少記録を更新する。【森口沙織、池田直】
自民党総裁選
現在、自民党に所属する国会議員票367票と党員票367票の計734票で争い、過半数を獲得した候補が新総裁に選出される。総裁任期は3年。党員票は全国の党員・党友による投票結果を基に、ドント方式で各候補に配分される。1回目の投票でどの候補も過半数を獲得できなかった場合、上位2人による決選投票を行う。都道府県ごとに党員投票数が多かった候補に1票が割り振られる仕組みで、国会議員票367票にこの都道府県票47票を加えた計414票で争われる。
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