東京電力・福島第一原発の処理水海洋放出は、2023年8月24日から始まり累計でタンク62基分にあたる約6万2000トンが放出された。福島県によると2023年度の沿岸漁業に新しく就業した人は26人で、震災後最多となった。明るい兆しもある福島の漁業を後世に繋げていくためにも東京電力は作業を「確実に」進め信頼を築いていく必要がある。

<より厳しい基準で放出>
処理水にはトリチウムが含まれるが、その濃度について、WHO=世界保健機関は、飲料水の基準は1リットルあたり1万ベクレル。国は、海洋放出時の上限を1500ベクレルとするなか、東京電力は放出停止を判断するレベルとして、より厳しい700ベクレルを設けている。
周辺の海域モニタリングで、実際に検出された最大値は29ベクレルで異常は確認されていない。

<水産物の輸入を規制する国・地域も>
一方で、処理水の海洋放出に伴い「規制」を行った国と地域もある。
中国とロシアは、日本産の水産物について輸入を停止している。また、香港は福島・宮城など10都県の水産物などを、マカオは生鮮食品などの輸入停止を続けている。
全国の漁連の代表からは、この措置に対しこの先を心配する発言があった。福島県漁連の野崎会長は、処理水の放出についてこの一年の取り組みは評価しながらも「最後の1滴まで安全にやってもらい福島の漁業が存続できることが非常に重要」と話した。

<漁業の未来を担う漁師>
相馬双葉漁業協同組合では、福島県の検査に加え、出荷するすべての魚種で独自の検査を行い安全性を確認している。
福島県南相馬市・真野川漁港の漁師・桑折亮佑さん(26)は「この海の魚が大好き。どのの魚でもおいしいですよ」と話す。
高校卒業と同時に、祖父と同じ漁師になることを決めた桑折さん。当時は試験操業の真っ只中で、漁の回数が制限されるなか、必死で動き方を学び一人前の漁師として成長してきた。

<海洋放出に諦めに近い感情も>
処理水を海洋放出する方針が決まったのは、試験操業から本格操業への移行期間に入った矢先のこと。当時は、諦めに近い感情がこみ上げたと話す。
海洋放出が続けられるなか、2024年から船長となった桑折さん。この一年間で魚の価格に変わりがなかったこと、風評被害を感じなかったことが救いと話すが、不安は拭えない。
「自分たちの代になったときに、ずっと変わらず漁を続けていけるのか不安はありますね。変わらず、魚が売れるのかな」と桑折さんは語った。

子々孫々まで福島の漁業は続くのかー。安全に廃炉が完了するまで、その不安は無くならない。

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