衆院東京15区補選の街頭演説で警備にあたる警察官ら。聴衆が近づけないよう柵も設置された=東京都江東区で2024年4月21日午後5時8分、島袋太輔撮影

 28日投開票の衆院東京15区補欠選挙を巡り、立候補している特定の陣営が他の候補者らに「選挙妨害」を繰り返しているとして、日本維新の会と国民民主党は23日、規制を強化する公職選挙法改正案の国会提出に向けて各党・会派と議論を始める考えを示した。一方、この陣営は「妨害の意図はない」と反発を強めており、選挙期間中に「選挙の自由」が物議を醸す事態になっている。

 動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開された動画では、この陣営が他陣営の街頭演説に車で近づき、スピーカーで「売国奴」などと叫ぶ様子が確認できる。

 公職選挙法には「選挙の自由妨害罪」が定められ、選挙に関する集会や演説などを妨害すると、4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処される。

 松本剛明総務相は23日の記者会見で「選挙運動の自由を暴力、妨害などで侵す行為は公選法上の処罰の対象となりうる。公正、安心、安全に選挙運動が行われることが大事だ」との見解を示した。

 同補選で新人を擁立した維新の音喜多駿政調会長は同日の記者会見で「演説会場での妨害はもちろんのこと、走行中の車の後ろにつけて『あおり運転』をされた」などと主張。「随時警察に相談しているが、一般論で候補者には選挙運動の自由があり(選挙の自由妨害罪を)適用しづらい。法律を警察が動きやすいものに変えていくことが必要だ」と訴えた。

 無所属新人を推薦する国民の玉木雄一郎代表も記者会見で「大音響で選挙を妨害された。候補者が何を訴えているか有権者が知る権利を害する行為だ」と強調し、公選法の規制強化を求めた。

衆院東京15区補選の候補者の街頭演説で、周囲を警戒する警察官ら=東京都江東区で2024年4月21日午後5時9分、島袋太輔撮影

 さらに、こうした行為が起こる背景として「動画のビュー(閲覧数)やインプレッション(表示回数)を稼いで、収益を上げることを目的に極端なことをやってしまう問題がある」とも指摘した。

 同じ無所属新人を支援する小池百合子東京都知事は19日、「これまで経験したことがない選挙妨害が発生している。法律上、見直してもらえないだろうか」と発言。9人による混戦となっている補選への関心の高まりと同時に、波紋が広がっている。

 岸田文雄首相は22日の衆院予算委員会で、規制を求めた国民議員の質問に対し「街頭演説は候補者の主張を有権者が直接聞くことができる点で、重要な意義を持つものだ」と強調。「問題意識は共有する。選挙運動の在り方に関わる問題なので、各党・会派で議論すべき課題だ」と述べた。

 ただ、規制強化には課題もある。音喜多氏は「表現や言論の自由は民主主義において非常に重要で、相手は『当選を目指してやっている』ということになる。そこを国家が判断するのはなかなか難しい」とも語った。

 「選挙妨害」と指摘された陣営の代表者は23日に公開した動画で「選挙妨害だと言う方が選挙妨害だ。私たちは一定の社会正義の上でやっている」などと主張。収益目的だと指摘されていることについても「そうではない」と否定した。【田中裕之】

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