東京都知事選挙で、NHK党が掲示板枠を大量にジャックし、候補者と無関係のポスターを多数貼り出した問題。

当事者2人に直撃し、その真意を聞き出した。

動物イラスト並ぶ光景に「カオス」

東京都知事選挙で物議を醸した"ポスター”を巡る問題について、渦中の人物となった候補者2人を取材した。

この記事の画像(17枚)

河合悠祐氏は「大成功かなと思っています」とコメントし、NHK党・山田信一氏も「話題になって成功したと思っています」と話した。

史上最多の56人が乱立した今回の都知事選では、都内の至る所で、異様な光景が見られた。

動物などのポスターが並ぶ

葛飾区の新小岩駅前の掲示板には、ゴリラ、サル、タコ、ハムスターなど、動物のかわいいイラストのみで、候補者の名前が書かれておらず、関係のないポスターがずらりと貼られていた。

さらに別の掲示板では、猫のポスターが貼られており、「春」や「葵」などと、候補者ではなく猫の名前が書かれていた。

いろんな猫のポスターが、「凹の字」の配列でずらりと並ぶ異様な光景だ。

問題の発端は「N党」

有権者である都民からは「ギャーッと思った。『こんなにいっぱいなんで?』と思った」「無法地帯だよ。こんなめちゃくちゃだったら最初からやらない方がいいんじゃない」などの戸惑いの声が上がった。

NHK党のHPのポスタージャックに関するページ

この事態を引き起こしたのが、政治団体の「NHKから国民を守る党」だ。

掲示板の枠48人に対して、半分を占める24人を擁立し、立候補していない人でも、寄付をすれば、掲示板に自由にポスターを貼れる権利を与えたのだ。

その結果、都内各所に候補者とは関係のないポスターが貼られる事態が発生。品川区の掲示板には、都知事選に立候補していないNHK党の立花党首のポスターが貼られた。

掲示板に貼られた女性格闘家のポスター

秋葉原の掲示板には、立候補していない格闘家の女性のポスターが、24枚ずらりと並んでおり、掲載されたQRコードを読み込むと、女性の公式YouTubeチャンネルが表示された。

都民は「カオスですよね。ゴチャゴチャで、誰が何を主張してるか分からない。もうちょっと真面目に選挙に向き合って欲しい」と話している。

掲示板の枠を、販売するともいえる行為は、違法ではないものの、有権者に戸惑いを与えた。

「話題になって成功した」

NHK党から出馬した山田信一氏は、24人という大量擁立の狙いについて、「NHK党の作戦として、一人立候補しても全く取り上げられない」と説明し、ポスタージャックについて、「とても話題になって成功したと思っている。それが理由」と話した。

「都知事になる」ことが目的ではなく、話題になるために立候補したと話す山田氏。

さらに、選挙でポスターを掲示する制度の問題点について指摘し、「都内1万4000カ所にポスター、とても貼れない。貼れるのは、資金力と組織力がある陣営のみ。問題提起をして無理やり法律を変えていく狙い」と話した。

一方で、56人の候補者が乱立したことで、掲示板の枠が足りず、クリアファイルを使って、枠の外に掲示せざるを得ない候補者も出ていた。

愛犬を連れて演説を行っていた小林弘氏は、3日、都などに対しポスターが枠内に貼れないのは不平等として、約2000万円の損害賠償を求めて提訴した。

会見では、「誰が考えても不平等なので、絶対に許すわけにはいかない。200万円もかけてポスター見えないって、200万円の価値どこにあるの」と怒りを露わにした。

都知事選で小林弘氏は、7408票を獲得し、全体の13位だった。

一方、691票で、35位に終わったNHK党の山田氏は「ポスター掲示場のルールにのっとってやっているだけ。選挙管理委員会は、8人分増やさなかった責任は大きい」と話し、掲示板の枠が足りなかったことは、都の選挙管理委員会の責任だと主張した。

空白が目立つ田町駅前付近の掲示板

一方で、港区・田町駅付近ではほとんどポスターが貼られていない掲示板もあり、枠の購入者がいなかったのか、48枠のうち、空白が目立っている。

立候補者の顔が見えない掲示板に、都民は「ガラガラで実際の候補者何人みたいな」「選挙自体が嫌になるっていう問題が出てくる」とコメントした。

「ギリギリ攻めた」

都知事選のポスターを巡っては問題が相次ぎ、警察が候補者に警告する事態も起きていた。

露出の多い女性の写真が使われたポスター

7日夜、白塗りの顔で取材に応じたのは、バットマンの悪役ジョーカーに扮した、河合悠祐氏だ。

河合悠祐氏は「あれだけ私の貼ったポスターで話題になると思わなかったので、ここまでギリギリできるんだよというところを攻めたポスターだった」と話す。

6月20日、告示日に張り出されたポスターに、露出の多い女性の写真が使われ、SNSなどで炎上。選挙戦初日に河合候補は警視庁から呼ばれ、警視庁本部に入っていった。

その後、警視庁から「都の迷惑防止条例に違反する可能性がある」として警告を受け、自らポスターを撤去した。

取材に対し、「反響の大きさは想定外だった」と振り返った河合氏。

問題のポスターについて「局部は隠しているので水着と変わらないっていう解釈なので、別に悪いことをしたという自覚はあんまりない。ただ警察から警告も受けてしまったし、もしかしたらやりすぎたかも」と話している。

一方で、問題となったポスターを貼った理由を、河合氏は「若い人の投票率があまりにも低すぎるから、期日前投票に関しては史上最高の投票率になったということなので、少しは私が貢献できたのではないか。そういう意味では大成功ですね」と主張した。

「投票率アップに貢献できた」と胸を張る河合氏。得票数は、2035票で全体の21位だった。

様々な問題が起きた、都知事選のポスター掲示板を巡る問題。

NHK党は、「ルールが変わらなければ、今後の選挙でも掲示板ジャックを続ける」と宣言している。

拓殖大学・岡田陽介准教授は「一番規制すべきなのは、有権者に誤解を与えるような情報をいかに防ぐか、もしくは排除するかということが重要。有権者がきちんと政策ないし候補者を選べるということが重要かと思う」と話し、「候補者がのっていないポスターは、今後、規制すべきだ」との見方を示した。

前代未聞のポスター問題に対し、対策が急がれる。
(「イット!」 7月8日放送より)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。