6月19日、国会で可決・成立した改正政治資金規正法。抜本的な改革には遠く、福島県で浮き彫りになった課題も先送りされる形になっている。

「落第点」発言に反論

6月19日に初めて党首討論に臨んだ岸田首相。可決・成立した改正政治資金規正法を「落第点だ」と酷評した立憲民主党の泉代表に対し「禁止、禁止、禁止というのは、大変気持ちはいいかもしれない。分かりやすいかもしれない。しかし、現実的な政治の中で政治資金というものは、民主主義を支える大変重要な要素であります」と反論した。

2024年6月19日 党首討論
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改正のポイント

自民党の派閥の裏金事件を受けて改正された政治資金規正法。そのポイントは…
◆パーティー券の公開基準は「20万円超」から「5万円超」に引き下げに。
◆収支報告書の不記載で、議員に「連座制」を導入。公民権停止の対象に。
◆政策活動費の領収書は10年後に公開。
◆政策活動費の使途を監査する「第三者機関の設置」

改正された政治資金規正法のポイント

期待していないとの声も

この改正について街の人からは「政治にお金がかかりすぎるから、そうやってみんなお金稼がないといけない。5万も10万も大差ない」「私たちのように年金をもらっている人たちはちょっとしんどい。自分たちだけ多少優遇しているところもあるので、だからちょっと緩いな」「そんなに急に変わらない。政治家が心入れ替えてくれれば違うのかもしれないですけど、あんまり期待していない」との声が聞かれた。

課題解決は先送り

県民から厳しい声が相次ぐ背景には、改正された法律でも多くの課題が残っていることがありそうだ。その一つが、福島県でも浮き彫りになった「税の優遇」をめぐる問題だ。
比例東北ブロック選出の菅家一郎衆院議員は、派閥からキックバックされたカネを自らが代表を務めていた党支部に寄付する方法で税の優遇を受けていた。

比例東北ブロック選出の菅家一郎衆院議員

個人が政党や政党支部などに寄付を行った場合、法律で所得税が控除される「寄付金控除」という仕組み。
改正された法律では「検討を加え必要な措置を講じる」とされ、課題解決は先送りされた形だ。

控除申請の議員は他にも

この「税の優遇」は、菅家衆院議員だけでなく、福島県関連の国会議員で広く使われている実態が浮き彫りになった。福島テレビは福島県選挙管理委員会に情報公開請求を行い、2019年から2023年までの5年間を調べた。

福島県関連 自民党・衆院議員 寄付金控除申請(2019年~2023年)

自らが所属する党の関連団体に寄付を行い「税の優遇」を申請する方法は、与党・野党問わず広く使われていた。
自民党の衆院議員では福島県関連の5人全員が申請していて、総額は約8200万円に上っていた。また自民党の参院議員でも、福島関連の2人とも申請し総額は1100万円余りだった。

福島県関連 自民党・参議院議員 寄付金控除申請(2019年~2023年)

さらに、野党でも福島県関連の衆院議員4人全員が申請していて、総額は2100万円余りに上っていた。

福島県関連 立憲民主党・衆院議員 寄付金控除申請(2019年~2023年)

市民の参加を促す仕組みなのに…

税法の専門家は、議員がこの制度を利用できる現状を問題視している。
「政治献金をしたら税金を優遇するという、この制度自体が何のためにあるのか考えてみると、おそらく献金をすることで民主主義の基礎である選挙とか政治に少しでも参加してもらおうというもの」と話すのは、税法を専門とする青山学院大学の三木義一名誉教授。

税法を専門とする青山学院大学の三木義一名誉教授

「市民の政治参加を促すための仕組みを、政治家が使うことが問題」と指摘する。その上で、三木名誉教授は「自身が代表を務める政党支部」だけでなく、国会議員の政治団体への寄付そのものを見直すべきだと考えている。
「私たちの税のあり方を決める議員たちですよね、僕ら以上に税については潔癖で自立性の必要がある。第三者の専門家たちの判断をちゃんと立ててもらって国会議員が素直に従って、それを法律化するというところまでいかなければダメです」と三木名誉教授はいう。

改正政治資金規正法で残された課題は「税の優遇」だけではない。これまで公開義務のなかった「政策活動費」については10年後に領収書が公開されることになった。しかし、具体的な仕組みは決まっていないため、今後協議されることになる。
公開されても、黒塗りだったとならないように、注視する必要がある。

(福島テレビ)

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