育成就労を新設する改正法が成立した

技能実習に代わる外国人材の新制度「育成就労」を新設する出入国管理法などの改正法が14日の参院本会議で可決、成立した。与党や日本維新の会、国民民主党などが賛成した。現制度で原則認めていない本人意向の転職ができるようになる。公布後3年以内に施行する。

従来の技能実習制度は原則3年間転職を認めていない。劣悪な労働環境に耐えられず失踪する事例も相次いだ。新制度は業種ごとに1~2年の間で定めた制限期間後は本人の意向で転職できる内容を盛り込んだ。日本語や技能といった条件にする。

国会審議において転職によって地方から都市部に人材が流出するとの懸念も出た。衆院では与野党の修正協議の結果、大都市圏に過度に就労が集中しないように「必要な措置を講ずる」と付則に記した。

転職するケースが増えることを見越し、仲介業への監督も強める。転職のあっせんに関われるのはハローワークや監理支援機関などに限定し、民間の仲介業者は認めない。不法就労などをさせた場合の法定刑も引き上げる。

育成就労は人材育成に加え、人材確保を目的として明記した。期間は3年間。試験などの条件を満たせば最長5年就労できる特定技能「1号」、その後に在留資格の更新に制限がない「2号」になることも可能だ。「2号」は家族を帯同でき将来は永住権も申請できる。

日本に長期滞在する外国人が増えることを想定して永住許可制度も見直す。税や社会保険料の納付を故意に怠った場合は永住許可を取り消せるようになる。これまでは虚偽の申告などを除き一度下りた許可を取り消す方法がなかった。

未払いなどがある者を国や地方自治体の職員が通報し、それに基づき入国審査官などが意見聴取をする。事実関係を把握した上で処分を判断する。

5月30日の参院法務委員会で参考人から「永住者の生活、人権を脅かす」と指摘が出た。与野党は協議をして「(取り消す)具体的な事例についてのガイドラインを作成し周知するなど、特に慎重な運用に努めること」と付帯決議に盛り込んだ。

岸田文雄首相は6月6日の同委で、永住許可が取り消しになる場合について「あえて支払いをせず、今後も納税する意思がないことなどが考えられる」と説明した。「破産や失業などの事情によりやむを得ず支払えなかったと認められる場合は該当しない」と強調した。

出入国在留管理庁は5月8日の衆院法務委で、2023年1〜6月に審査を終えた1825件のうち1割強の235件で住民税や国民年金保険料などの未納が確認されたと明らかにしていた。

外国人労働者の受け入れ窓口となる監理団体も許可基準が厳格になる。名称を「監理支援機関」とし、任意の外部監査人の設置を義務づける。受け入れ企業と密接な関わりを持つ役員の関与を制限し、中立性や独立性の確保をめざす。

ほかに中長期の在留外国人に携帯を義務化している在留カードを巡り、マイナンバーカードと一体化した「特定在留カード」を発行できるようにする入管法などの改正も決まった。25年度にも希望者に交付を始める。

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