首相官邸=本社ヘリから

 政府は11日、経済財政諮問会議を開き、今後の経済財政運営の指針となる「骨太の方針」の原案を公表した。33年ぶりの高水準の賃上げの実現や、好調な企業の設備投資などを踏まえ「デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンス」とした。デフレから完全脱却した上で「日本経済を成長型の新たな経済ステージへと移行させる」ため、あらゆる政策を総動員して物価上昇を上回る賃上げの定着を後押しするとしたほか、労働市場改革や生産性向上を進めるとした。

 現下の経済状況を転換点と捉え、「長期にわたり染みついた『デフレ心理』を払拭(ふっしょく)し、社会全体に、賃金と物価が上がることは当たり前であるという意識を定着させる」と強調した。ただ、実質賃金は4月まで25カ月連続でマイナスが続く。今後は、経済の好循環に向けた政策の実効性が問われることになる。

 また、人口減少下でも持続可能な経済社会の実現が重要とした。経済・財政・社会保障の持続性の確保には「人口減少が本格化する2030年代以降も、実質1%を安定的に上回る成長を確保する必要がある」と掲げた。高齢者や女性らの労働参加などを進め、2%の物価安定目標を実現した場合、「40年ごろに名目1000兆円程度の経済が視野に入る」とも明記し、成長は可能だとした。

 政府はこれまで「名目3%、実質2%」の成長率を目標としてきた。しかし、「人口減少が進む中、現実的な数字ではない」(内閣府幹部)といった見方が強く、今後は「実質1%」の成長を想定して、経済・財政運営を進める方針だ。

 原案では、3月の日銀のマイナス金利解除などにも触れ、「金融政策は新しい段階に入った」と評価し、今後も、政府・日銀が緊密に連携していくとした。また、「金利のある世界への移行による利払い費増加の懸念」が生じる中で持続可能な財政構造の確保が必要だとした。

 国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)は、「25年度の黒字化を目指す」と明記した。22、23年の骨太の方針では達成年次の明記を見送ってきたが、復活して堅持する方針を明確化した。25~30年度の6年間の新たな経済・財政計画も定めると明記し、25~27年度は「集中的に改革を講ずる」として、歳出改革などを進める。

 骨太の方針は与党との調整を経て、21日にも閣議決定する。【古川宗】

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