記者の左目頭付近にあったほくろのようなものが「基底細胞がん」と分かり、前回は手術体験を紹介した。このがんは転移することはまれというが、皮膚がんには進行が早く、転移するものもある。それぞれの特徴や見分け方を、国立がん研究センター皮膚腫瘍科長の山崎直也医師=写真=に聞いた。

◆早期発見が重要に

 皮膚がんの中で最も罹患(りかん)者が多いのが、基底細胞がん。「皮膚がん患者の4分の1を占める」という。「ほくろと間違えやすいが、だんだん大きくなる、真ん中がへこんでくる、出血するといった特徴があれば基底細胞がんを疑う。痰(たん)に血が混じったら肺がん、便に血が混じったら大腸がんを疑うように、出血は皮膚がんの一つの特徴」  記者のがんも、中央から2度出血したことがあった。紫外線が原因とされ、日光を浴びやすい顔の中でも、目の周りや鼻すじ周辺にできることが多いという。  ほくろと間違えやすいがんには、もう一つ「悪性黒色(こくしょく)腫(メラノーマ)」がある。皮膚の色に関係するメラニン色素をつくる細胞ががん化してできる。「進行が早く、転移するため、早期発見が重要。形が非対称で、境界があいまい、色が不均一、直径6~7ミリ以上、急に大きくなることなどが特徴」。皮膚がん患者の12%を占めるという。

手の親指にできた末端黒子型メラノーマ=国立がん研究センター提供

かかと付近にできた末端黒子型メラノーマ=国立がん研究センター提供


 日本人のメラノーマは足の裏や手のひら、爪の中などの体の末端部にできる「末端黒子(こくし)型」が4割を占め、浅く広がる「表在拡大型」、ドーム状に盛り上がる「結節型」などもある。ほくろとの区別が重要で、ダーモスコープというライト付きの拡大鏡で見たとき、色素が指紋の凹凸の下にあればほくろ、上にあればメラノーマと診断するという。

◆患者数は増加傾向

 また、皮膚がん患者で2番目に多く、17%を占めるという「有棘(ゆうきょく)細胞がん」は、赤くて、かさぶたが付いたり取れたりするのが特徴。顔にできることが多く、紫外線が要因の一つとされる。「湿疹だと思って薬を塗ってもなかなか治らないことから気付く。進行するとじゅくじゅくしたり悪臭を発したりする」という。  皮膚がんは、この3種類のほかにも、外陰部(尿路や生殖器の出口付近)や肛門の周りにできることが多い「乳房外パジェット病」、高齢者の頭部や顔などにできやすい「皮膚血管肉腫」「メルケル細胞がん」などがある。山崎さんは「皮膚がんは内臓と違い、目視で確認できるが、頭部にできるがんは髪の毛で気付かないまま進行することも多い」と指摘する。  厚生労働省の2020年のデータによると、国内で罹患者が最も多いがんは、大腸がんで14万7725人。次いで、肺がん、胃がんが多く、皮膚がんは12番目の2万3846人。山崎さんによると、皮膚がんは白人に多く、人口あたりの罹患率を日本と比較すると米国で約40倍、オーストラリアで約70倍。「メラニン色素が紫外線のバリアーになるため、黒人には少ない。黄色人種はその中間。色の白い人は要注意」という。  皮膚がん患者は増加傾向で、若い世代も発症するが、かかりやすいのは65歳以降。高齢化に伴い、生涯に浴びる紫外線の総量が増えたことが要因と考えられるという。「近年は日差しが強い日も多く、日傘や帽子を使い、日焼け止めを塗るなどの対策をしっかりすることが予防につながる」と山崎さん。「早期発見は転移を防ぎ、手術痕も小さく済む利点がある。がんの特徴にあてはまるほくろがあれば早めに皮膚科を受診してほしい」と呼びかける。=この連載は瀬野由香が担当しました。


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