患者参加型の医療のあり方を考えるパネルディスカッションが11月29日、横浜市内で開かれた「第19回医療の質・安全学会学術集会」であった。アーティストで、厚生労働省「上手な医療のかかり方」名誉大使のデーモン閣下が登場。医療者、患者、行政の立場から医療安全を推進してきた人たちと語り合った。
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デーモン閣下は今年、大動脈疾患の手術を受けたと明かした。この手術に伴い、きわめて低い確率だが、声を失う可能性があると医師に伝えられたという。手術に同意し「はい」と答えると、「いいんですか? あなた声を使う職業ですよね」と念を押された。「やらないと死んじゃうならしょうがない」と気持ちが固まったという。「なんでそんなことを言うんだ、とは思わなかった。ちゃんと言ってくれてよかった」と振り返った。
2003年に医療事故で長男を亡くし、現在は「患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋」の理事長を務める豊田郁子さんは「治療の選択肢を示して、一緒に考えながら決定するということがこれからの時代は必要」だと強調。群馬大学医学部付属病院医療の質・安全管理部の田中和美部長は「共同意思決定がキーワード」としたうえで、「迷った時は患者さんのためになるのはどっちか、と考えたら間違いない」と語った。
群大病院では、14年までに相次いだ死亡事故を教訓に、入院患者が自身のカルテ情報を閲覧できるようにした。また、医療行為に関する「インフォームド・コンセント」(十分な説明と同意)を徹底するため、患者とのやりとりを録音し、カルテに残している。
田中さんによると、職員への事前のアンケートでは、カルテを開示することで患者に誤解を与えたり、問い合わせが増えたりするのではないかといった不安から、半分以上が否定的だった。だが、実際に取り組みを始めて2年ほど経つと、肯定的な回答が8割を占めたという。
田中さんは、患者との間に「この病院は隠していない」という信頼関係ができたことが大きいと説明。厚生労働省医療安全推進・医務指導室の松本晴樹室長は「患者参画というと医療側は最初、身構えてしまう。やってみたらよかったというケースを広げていきたい」と話した。
会場には多くの医療関係者が詰めかけた。群大病院の患者参加型医療推進委員会に委員として携わる豊田さんは、医療安全の仕組みづくりに患者が参加することの重要性を訴えた。「私たちも医療者の悩みを聞いて、コミュニケーションの取り方を学ばないと、いつまでたっても誤解したままになってしまう。だから受け入れてほしい」
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