のどの奥にできる下咽頭(いんとう)がんを、唾液(だえき)の成分を調べるだけで早期に発見できることを岡山大の衣笠秀明助教らの研究グループが確認し、発表した。下咽頭がんに対する有効な血液腫瘍(しゅよう)マーカーはこれまでなかったといい、内視鏡を使った検査がされていた。この技術を応用すれば、ハイリスクな患者の早期発見につながる可能性があるという。
研究成果は3月27日、学術雑誌「British Journal of Cancer」のオンライン版に公開された。
研究グループによると、咽頭がんは症状が出にくいといい、がんが進行してから見つかる割合が高いとされる。特に下咽頭がんは悪性度が高く、進行期での5年生存率は40%以下という。
研究グループは、岡山大学病院で下咽頭がんで内視鏡治療をする患者61人と、このがんではない患者51人の唾液中のDNAを抽出し、がん化に影響を及ぼす遺伝子の「メチル化」について、その頻度を比較した。
その結果、下咽頭がん患者の方がメチル化が極めて高かった。また広島市民病院の下咽頭がん患者26人の唾液で調べても、22人(約85%)の患者から高いレベルのメチル化が検出された。
この研究結果から、唾液を調べれば、がんの早期発見が可能となり、局所を切除して根治を目指すことができるようになるという。
衣笠助教は「のどの内視鏡検査は苦痛を伴うため麻酔が必要で、全ての患者を詳細に見ることは難しかった。今回の手法により、がんの早期の発見、治療につながり、患者の生活の質の改善に大きく役立つ技術になる」と期待をこめる。
研究グループは、唾液診断の製品化や、がん検診に応用されることで、新しい診療を構築することが期待できるとしている。
下咽頭がんをめぐっては、タレントの見栄晴さんが今年1月にステージ4であることを公表。芸能活動を一時休止して治療し、4月に活動再開した。(上山崎雅泰)
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