日比野さんの数値。「睡眠994.0分」とあり、検査中の24時間のうち16時間34分の睡眠があった
24時間の睡眠の状態を調べる検査で、日比野さんが寝ていたのは16時間超。長く睡眠が必要な体質だと分かった。高校生の時は午後9時に就寝して約9時間眠り、朝起きても強烈な眠気で二度寝。授業中も頻繁に居眠りしていた理由がようやく説明できた。大学生になっても眠気は変わらず、講義についていくのが大変に。精神科医の勧めで、専門の医療機関を受診した。今は、覚醒作用のある中枢神経刺激薬を朝のんでいる。それでも眠気はなくならず、講義中に居眠りすることもしばしば。大学には病名を伝え、生活習慣の乱れが原因でないことを理解してもらい、テストの時に居眠りしていたら起こすように頼んでいる。日比野さんは「夜更かしで昼間の眠気があると疑われるのはつらい。悩みを打ち明けたときに、耳を傾けてくれるだけで安心できる」と話す。 NPO法人日本ナルコレプシー協会の副理事長、駒沢典子さんは「過眠症について学校などで認識は広がっているが、『たるんでいる』などと誤解されることも。他の人と同じように生活できないことに悩む人も多く、ナルコレプシーはパーキンソン病並みに生活に支障が出るとの調査結果もある」と課題を挙げる。◆専門医受診して
睡眠医療に詳しい愛知医科大名誉教授で桜クリニック(名古屋市)睡眠外来担当、塩見利明さんによると、昼間強い眠気に襲われる場合、睡眠と覚醒の切り替えに関わる脳内物質の不足が原因の一つである「ナルコレプシー」や、それに似ているが、やや症状が異なる「特発性過眠症」の可能性がある=表。どちらも10代で多く発症し、ナルコレプシーに限っても約600人に1人の患者がいるとされる。他にも、無呼吸で夜の眠りが浅くなる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」や、うつ病など精神疾患の影響も考えられる。 睡眠障害の専門医療機関では、睡眠状態のほか、朝から夕方の眠気を客観的に調べる検査などで原因を突き止める。過眠症なら、対症療法として中枢神経刺激薬の適切な服用を勧め、睡眠の質を高めるための生活指導をする。SASなら適切な治療を行い、精神疾患が疑われれば、精神科を紹介する。「早く気付いて治療を受ければ、症状の進行を食い止められる」と塩見さん。遅れると「怠けている」といった心無い言葉などがストレスになり、心身に悪影響が及ぶ。◆睡眠不足の人も
長い睡眠時間が必要な人がいる一方、睡眠が短すぎるために、昼間に強い眠気が出るなど過眠症のような症状に悩む人も。めいほう睡眠めまいクリニック(名古屋市)院長の中山明峰さんは「睡眠不足を過眠症と誤診しているケースもある」と指摘する。「日本は平均睡眠時間が非常に短く、睡眠を軽視している。必要な睡眠時間を確保しない睡眠負債の危険性に気付き、人により睡眠は異なることを知ってほしい」と訴える。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。