◆認知症 導尿難しく
レーザーで肥大した前立腺を除去する光選択的前立腺蒸散術(PVP)のイメージ図(ボストン・サイエンティフィック ジャパン提供、一部改変)
ただ、留置には問題が多い。長期だと最悪の場合、陰茎が裂けることがある。認知症の患者がカテーテルの必要性を理解できずに抜いてしまい、大出血を起こすことも珍しくない。何より、尿を他人に見られることなどで患者の尊厳が損なわれる。医療者にとっても、カテーテルを入れる際に患者が暴れることがストレスという。 そんな患者の脱カテーテルを進めているのが、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)だ。取り組みを主導している研修開発研究室長で泌尿器科医の西井久枝さん=写真=によると、17年から積極的に、肥大した前立腺をレーザーで除去する「光選択的前立腺蒸散術(PVP)」という手術=イラスト=を行い、成果を挙げている。 PVPの利点は、従来の手術より出血が少なく早ければ半日でカテーテルを外すことができること。三重県四日市市の男性(79)は脳出血などで歩行困難になり介護施設に入所中。昨年9月に尿閉になり、入院先でカテーテルを留置されたが、今年2月に同センターでPVPを受け、カテーテルから解放された。 同センターで尿閉によりPVPを受けた75歳以上の男性は昨年3月末までに39人。存命の37人のうち、身体・認知機能が良好な19人全員と、機能が低下している18人中16人が、術後1年でも、脱カテーテルを実現できている。◆「尊厳を守りたい」
西井さんは「PVP自体は前からある方法だが、術前術後の管理が難しいため、認知機能や身体機能が低下した高齢者にはあまり行われてこなかった。PVPを受け、残りの人生をカテーテルなしでいられたら本人も周りも幸せ。できる限り患者の排尿の尊厳を大事にしたい」と話している。
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