この春、新生活に合わせ、髪の毛を染めた人もいるのでは。理美容室でも市販の商品でも手軽にできる一方で、注意しておきたいのがヘアカラーリング剤によるアレルギーだ。頭皮の痛みやかゆみを引き起こし、使用を繰り返すと症状が重くなる。専門家に注意点や対策を聞いた。 (熊崎未奈)

■酸化染料 原因に

ヘアカラーによるアレルギーで赤く腫れた耳(松永佳世子さん提供)

 愛知県の会社員女性(51)は20代半ばから定期的に美容室で髪の毛を染めていた。以前から施術後に頭皮にかゆみを感じることはあったが、「よくあること」と気にしないでいたという。ところが2年前、美容室で染めた後、頭皮と顔に激しいかゆみを感じた。  病院に行き、薬を処方されて症状は治まったが、検査でカラーリング剤に含まれる化学物質「パラフェニレンジアミン」によるアレルギーだと判明した。「美容室でのカラーリングでこんな状況になるとは思いもしなかった」と話す。  そもそもカラーリング剤にはさまざまな種類がある。中でも色持ちがよく、広く使われているのが、ヘアカラーや白髪染めといった酸化染毛剤だ。主成分であるパラフェニレンジアミンなどの酸化染料がアレルギーの原因になる。  アレルギーに詳しい藤田医科大名誉教授の松永佳世子さんによると、毛染めによるかぶれにはアレルギー性と刺激性がある。刺激性は、カラーリング剤に含まれる化学物質の刺激の強さによるもの。頭皮に痛みやかゆみを感じるが、比較的軽度で洗い流せば症状は消える。  一方のアレルギー性は、毛染めの24時間後以降に痛みやかゆみが起きやすく、1週間ほど続く傾向がある。松永さんは「もし症状が2日以上続くのであれば、アレルギーの可能性があり、病院を受診してほしい」と話す。一度発症すると酸化染毛剤を使うたびに症状が出るようになり、使用を繰り返すと重症化する。まれに毛染めの直後にじんましんや息苦しさなどの重篤な症状が出ることもある。  「アレルギーはある日突然出ると思われがちだが、そうではない」と松永さんは指摘する。かゆみは感じなくても皮膚に赤みがある、軽くかぶれているなど、前兆が必ずあるという。ただ、頭皮や耳の裏などは自分では気付きにくい。

■パッチテストを

 消費者庁や日本ヘアカラー工業会は市販の酸化染毛剤を使う場合、48時間前に必ずパッチテストを行うよう呼びかけている。染毛剤を肌に少量つけて反応を見る方法だ。また、同会は理美容室向けに手引を作り、施術前に過去の皮膚トラブルの確認を徹底するよう求めている。  ただ、パッチテストでは反応が出ない「偽陰性」になることも。理美容室では確認が不十分な場合も少なくない。松永さんは「毛染めの後は頭や耳がかゆくないか、赤みはないか意識して、少しでも異常を感じたら使用をやめて、病院に行ってほしい」とすすめる。アレルギー反応が出たり、パッチテストで陽性だったりした場合、酸化染毛剤の製品はいずれも使用できない。  カラーリング剤は他にも、酸化染料が含まれないヘアマニキュア、ヘアマスカラなどもある。色持ちは短いが、髪を染めることはできる。  しかし、松永さんによると、これらに含まれる香料などがアレルギーの原因になる人もいるという。「原因が分からないまま使い続け、重症化する例もある。異常を感じたらアレルギーの専門医で検査を受けてほしい」と話す。


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