10月から始まる医薬品の自己負担について、仕組みを知らせるチラシを掲示する薬局=愛知県扶桑町の「はぐろ薬局」で
医療機関の処方に従い薬局で薬を購入する際、一部の薬で料金が加算される仕組みが、10月1日から始まる。ジェネリック薬(後発医薬品)のある先発医薬品を、患者が希望した場合だ。後発薬の発売から5年たつなど一定の基準を満たす先発薬では、後発薬との差額の4分の1が保険適用されなくなり、「特別の料金」として自費で払う。支払いが増えるケースには注意が必要だ。 (佐橋大)◆複雑な仕組み
愛知県扶桑町の「はぐろ薬局」では、新しい仕組みを知らせる掲示をし、先発薬を求める患者に説明している。薬剤師の奥村智宏さんは「これまでにない複雑な仕組みなので、分かりやすい説明、掲示になるように心掛けている」と話す。 薬には、開発した会社が製造、販売する先発薬と、特許が切れた同じ成分を使った後発薬がある。開発費などがかからない分、後発薬の方が原則安いが、その差はさまざまだ。 医療保険で賄う医療費は、ほぼ右肩上がり。2023年度には、約47兆3千億円に達した。健康保険組合は24年度、平均9・32%と過去になく高い保険料率を設定したが、8割以上の組合が赤字を見込む。 削れる部分として厚生労働省が着目したのが、約2割を占める薬剤費。組合などもジェネリック使用を呼びかけているが、より使用割合を高めようというのが今回の狙い。入院時に、個室などを希望するとベッド代が自費になり、それ以外が保険で支払われる「差額ベッド代」と同じ「選定療養」の仕組みを使う。 例えば、1錠100円の先発薬と同60円の後発薬がある場合、差額は40円。先発薬を希望すると、差額の4分の1にあたる10円が保険適用とならず、「特別の料金」となる。さらに10円には消費税として1円かかる。3割負担の人なら、30円で手に入った薬が、38円払わないと入手できなくなる=図。一方、ジェネリックなら、自己負担は18円のままで変わらないため、先発薬との差は現在の12円から20円に。費用を気にする人が、ジェネリックを選ぶことを国は期待している。◆例外ケースも
混乱を心配する声も。小児の多くは、市町村の助成で医療費の負担がなくなっているが、10月以降、先発薬を選ぶと「特別の料金」が発生する。障害のため市町村から医療費の全額助成を受けている人でも同様。愛知県薬剤師会の副会長も務める奥村さんは「より丁寧に説明し、理解を求めていく必要がある」と話す。 ただし、すべての先発薬にその料金が発生するわけではない。後発薬が品不足などで入手できない場合には、先発薬を選んでも追加費用は発生しない。 医師が「先発薬と後発薬で効果に差がある」「副作用の出方に違いがある」などと判断し、処方箋の「変更不可(医療上必要)」の項目にチェックを入れても、これまで通りの負担で先発薬を入手できる。逆に、「先発薬の塗り薬の方がべたつきが少ない」など、患者の希望に従って先発薬を処方、調剤すると追加の負担が発生する。 名古屋市立大の鈴木匡特任教授は「医療保険の財政は逼迫(ひっぱく)し、全てを医療保険で無条件に賄えない状況が近づいている。医療財政の状況を考えるきっかけになれば」と話す。 厚労省によると、後発薬の使用率は数量ベースで8割を超え、金額ベースでは56・7%にとどまる(いずれも23年9月診療分)。
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