消化管に炎症が起こる潰瘍(かいよう)性大腸炎やクローン病があっても、市販のお菓子を楽しみたい。患者たちのそんな願いにこたえる「お菓子図鑑」が、このほど完成した。国内の菓子メーカー8社の協力を得て、武田薬品工業がつくった。

 「IBDreamお菓子図鑑」は、ビスケット、チョコレート、スナック、米菓、キャンディーの全5編。市販のお菓子220品目が紹介されている。

 東京医科大学病院・管理栄養科長の宮澤靖さんが監修した。一日の間食の目安になる「脂質5グラム」に相当する分量を調べた上で、「3分の1袋」「3粒」などとわかりやすく表記した。腸に負担がかかる可能性がある食物繊維、辛いスパイスなどを多く含むものは除外したという。

 宮澤さんは、「患者さんご本人が、体調のいいときに自分へのご褒美としておやつを食べたいときや、親御さんがおやつを選ぶときなどに活用して欲しい」と話す。

 表紙の挿絵は、イラストレーターのカメダさんが担当した。自身も、2017年に診断を受けたクローン病の患者だ。SNSの活動がきっかけで、2020年度から、武田薬品工業が立ち上げたIBDの啓発活動に協力している。

 図鑑の挿絵では、同じビスケットでもベージュ色に濃淡をつけ、できるだけカラフルに、明るい気持ちになれるように工夫した。「いつも、お菓子のパッケージの裏を見て自分で計算していたけれど、これは便利」とカメダさん。「少し気をつければ、こんなにいろいろ食べられるんだ、と伝わるとうれしい」

 お菓子図鑑は、武田薬品工業のHP「IBDステーション」(https://www.ibdstation.jp/ibd-intheirshoes/workshop/sweets-book/)から無料でダウンロードできる。

<炎症性腸疾患(IBD)>

 腸などの消化管の粘膜に炎症が起こる、原因不明の病気。潰瘍性大腸炎とクローン病がある。発症年齢は若く、10~20代が多い。国の難病に指定されていて、国内の患者数は計約24万人。診断に結びついていない人も多くいると考えられている。

 近年、治療薬が進歩しており、症状が落ち着いている「寛解」を維持できるようになってきている。(鈴木彩子)

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