医療費が増大するなか、効率化を図るために政府は医療DXを推し進めている。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を使って社会を大きく変えること。データを駆使し、国民の健康増進やよりよい医療の提供▽医療機関や行政の効率化▽膨大な医療情報を使った政策立案や研究・創薬の発展をめざす。

 背景には、日本での医療のデジタル化の遅れがある。新型コロナウイルスの流行初期、保健所には医療機関からの患者の発生届がファクスで大量に届き、職員は対応に追われた。

 コロナの反省をふまえ政府は2022年、医療DXの推進を「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で打ち出し、推進本部を設置。翌年には具体的施策の工程表を策定した。マイナ保険証の利用を、医療DXの基盤と位置づけ、24年12月に紙の健康保険証の廃止を決定。医療・介護・行政情報の連携を進める。

 すでに稼働しているオンライン資格確認の情報に加え、25年1月からは「電子カルテ情報共有サービス」も一部地域で始まり、異なるメーカーの電子カルテを医療機関で共有できるようになる。検査値、アレルギーなどの6情報が閲覧でき、紹介状も電子的にやりとり可能となる。マイナンバー関係の個人ページ「マイナポータル」では、マイナ保険証として登録していれば、自身が受けた診療や薬の情報、検査値などを見ることができる。生活習慣病などの患者は、医師からの生活上のアドバイスも確認できる。

 行政サービスの効率化のため、救急現場で過去の診療情報を閲覧できるシステムの実証実験も、5月下旬から一部地域で始まっている。近年、救急隊の出動件数が増加し、現場到着までの平均時間は22年に初めて10分を上回った。救急隊がマイナ保険証を通じて診療記録や処方薬を確認し、適切な搬送先を探していく。

 また、個人が特定されない情報を使い、難病の薬の開発につなげたり、ワクチンの副作用を早く見つけたりすることが期待されている。

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